夏…?
         〜789女子高生シリーズ

         *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
          789女子高生設定をお借りしました。
 


      




さてさて、
白亜の洋館風、緑もふんだんという、
夏空にも抜群な佇まいのする三木邸のお庭にて、
賑やか華やかに繰り広げられているのが、夜店屋台へのリハーサル。
今日も朝からいいお天気で、
緑豊かなお庭とて、結構な温気にむせ返るようだったけれど。
十代のお若いお嬢様がたには、
そこへ熱々の鉄板まで加わってもなお、さして苦ではないらしく。
近々催される夏祭りでの出店に、有能な助っ人として参加するべく、
彼女らが小手調べを手掛けておいでの、続く鉄板メニューは焼きソバで。

 「みゃあ?」
 「はい、いい子で見ていてね?」

思わぬお客様の乱入から、
少し冷ましたお好み焼きを“まずはどうぞ”という、
略式試食会になっていて。
ほどよくカリカリに焼けた豚バラを
小さなお口でむしっては
はふはふ・あむあむ、
それは美味しそうにぱくつく仔猫さんたち二人の愛らしさへ、

 『や〜ん、何て可愛いのvv』
 『……vv(頷、頷)』
 『あ、頬っぺの綿毛の先に かつ節が…vv』
 『こっちのくうちゃん、
  小さいながらも鼻梁が通ってますよねぇ。』
 『くろちゃんも、
  まだ寸がつまってるところが可愛いvv』
 『………vv(頷、頷、頷)』
 『あ、お手々で押さえたら まだ熱いよ?』
 『生地のところも食べてるね』
 『そりゃあ美味しいですものvv』

いきなりしゃにむに がぶりと食いつかずの、
小さなお口でお品のいい食べよう…というのもまた、
なんて可愛いのと大きにウケており。
それぞれに目許を細めていたお嬢様たちだったけれど。
いくら縫いぐるみのように愛くるしい存在が、
生き生きとちまちまと可憐に振る舞っているのが目眩を誘うほどの魅惑でも、
肝心要めの“お試し”をやり遂げぬ訳には行かないというもの。

 「さて、手も洗い直しました。」
 「よろしい。」

せんせえ役の平八の指示の下、七郎次も初心者とは思えぬ手際のよさで、
次から次へと手順を進める。
お口の周りを小さな舌でお掃除舐めしつつ、
小さなオーディエンスも食べるのをお休みし、大人しく見守る前で、
じゅじゅうと軽快な音を立てての調理開始。
絶妙な大きさに乱切りされたキャベツやニンジンを まずはと、
油を引いた鉄板で軽く撓めてから、
大サジ一杯の水で和えての蒸らし焼き。
その脇で、こちらも切り分けた豚バラ肉を、
焼き目がつくほど焼いてから、双方を合わせ。
続けて やっぱりその脇で、まずはほぐす程度に麺を温め、
固焼き風に焼き目をつけてから具材と合わせれば風味が増す。
ソースもいいが、塩味風味にしたければ、
コンソメか丸鷄だしと塩こしょうで仕上げれば出来上がり。

 「あ、キャベツのシャキシャキが絶妙vv」
 「……vv(頷)」
 「お水で蒸し焼きっていうのが利いたんですよ。
  あんなの知らなかったし。」

間違いなく“我が手柄”なのに、
いやいやいやと やや謙遜気味になって含羞む白百合さんで。

 「モヤシやタマネギを入れても美味しいですが、
  慣れるまで突飛なことはしない方が。」
 「そうですね。」

  エリンギも(美味いぞ、歯ごたえもあるし)。
  おおさすがは有名シェフに鍛えられた舌。
  え?違う?
  〜〜〜〜。///////
  兵庫さんが作ってくれたおやつ? あらまあ御馳走様…と。

一部、何でそれで通じてるんだろうという
不思議な会話にキャッキャと沸きながら、食も進むお嬢様たち、

 「ほ〜ら、こっちも美味しいですよ?」

もうすっかりと馴染んだか、
芝草のうえ、よちよちという足取りでお膝に寄って来た茶色の綿毛さんを、
身を折ってのひょいと手を延べ、こちらから抱え上げ。
ふうふうと冷ました焼きそば、
さあ“どうぞ”と七郎次が進呈すれば。
紅色のお眸々を瞬かせてから、
えっとぉとでも迷うように小首を傾げてから、
ちょんとした小鼻の下の、これまた小さな兎ツ口をぱかりと開き、
かぷと食いついては引いてのあむあむと、
愛らしく食すのがまた、

  「かぁわい〜いvv」 ×3

  はいはい、それはもう判ったから。(苦笑)

すらりと痩躯だったり、トランジスタ・グラマーだが均整は取れてたり、
どのお嬢様もなかなかに締まった体躯をなさっているものの、
ぐだぐだとは縁遠い、動き惜しみをせぬ運動量へは栄養補給も必要か。
健全に、且つ、おおらか朗らかに、
熱っつあつの焼きそばやタコ焼きを、
作る端から美味しい美味しいと
見ていても気持ちいい食べっぷりで平らげていらしたものの、

 「でも、当日もやっぱりこんな風に暑いんでしょうかね。」

新しいスカッシュのグラスでおでこを冷やしつつ、
暑っつ〜いと朗らかに口にした白百合さんが そのまま案じて言ったのは。
いくら火を通すとはいえ、
衛生上の管理とか、しっかりしないと大変なことになりかねないと、
それを案じてのことであり。
とはいえ、それへはひなげしさんが大丈夫とにっこり微笑った。

 「麺の下茹でや食材の保冷には、
  配達用とは別のキッチンカーを乗り付けますからご安心を。」

調理もその中でやっちゃうって手もあったんですが、
そこは“こういう手際を観るのも美味しさのうちだから”ってことで、と。
やさしい五郎兵衛さんからの申し出をお断りした旨、
えっへんと報告したひなげしさん。

 「でも、本当に素敵な車ですよ?
  特注らしいキッチンカーで、
  街なかで見かけて一目惚れしたと話したら、
  ゴロさんが作ったお人を探し出し、買ってくれたんですよぉvv」

 「判った判った。」

手であおぐようにしてヒートアップを宥める白百合さんへ、
いやあの、惚気の話じゃなくてと、
そこはひなげしさんも“たはは”と苦笑し。
そんな含むところだらけのややこしいやりとりへ、
お膝に乗っけた黒猫さんとお揃いで、
かっくりこと小首を傾げた紅ばらさんだったのだが。
そんな他愛ないポーズも可憐に決まっておいでのお友達を見て、
不意に何を思い出したやら。
いやさ、彼女の担当の
タコ焼きから連想しちゃったらしいことがあるようで。
メインクーンさんの小さなオツムへ手を伸ばし、
大きめのお耳の間へ手を入れて、
よしよしとふわふかな毛並みを撫でてやりつつ、
ひなげしさんが言うことにゃ。

 「実はネ、そのキッチンカーを作ってくださった
  車両工房のオーナーさんが、
  昨年の同じ花火大会の日の、川向こうでの縁日で、
  記録もの数のタコ焼きを売りさばいたそうなんですよ。」

彼女らの上へと落ちるまだらな木陰が涼風に揺れる。
それがまるで、中空ではじける花火の瞬きに見えたよな。
川べりで打ち上げられる花火大会は、
それを見に来る人達を見越した夏祭りやら縁日やらを
周縁のご町内それぞれへ幾つか抱えていて。
そういったところからの途切れない寄付もあってのこと、
つつがなくの何年も催されて来たのだけれど。
ここから少し先の、やはりお屋敷町そばの公園でも、
花火を観に来る人相手に、
例年のこととして催される縁日があるのだそうで。
とはいえ、

 「記録もの?」

ここと同じくらいの規模のお祭り、
だってのにその言い方は大仰じゃあないですかと、
そんな含みをもっての聞き返した七郎次へ、
ええと深々頷いた平八が続けたのが、

 「2日がかりで何と1000箱も。」
 「…………っ☆」

テレビ局だのラジオ局だのが協賛していて、
チャリティ目的の催しだとかどうとか大々的に宣伝していたとか、
納涼のステージがあって、
ゲストにアイドルや芸人が来た…とかいうそれじゃあなし。
そちらもこっちのと同じ規模の、
小さな縁日の中の出店だったそうで。
夜店でそれは破格だそうでと、眉をしかめた平八の言いようへ、

 「それは確かに…。」
 「……。(頷)」

商店街のコロッケじゃあるまいに…とまで
的確な例えが浮かんだお嬢様たちではなかろうが。
それでも、途轍もない量だというのは何となく判る。
第一、作るほうだって秒刻みでは掛かれまいから、
それも夕方から宵までという限られた時間内にとなると、
たかだか小さな町内会のお祭りの夜店で、
一晩に500箱は凄まじすぎる。

 「何人掛かりでですか?」
 「二人で、いや、
  お勘定担当の助手さんに もう一人いたそうなんで三人かな?」

何でも、例年招いてたおじさんが急に来られなくなったんでと、
そちらのオーナーさんがお店を切り盛りすることになって。
一人じゃ不安だってことでのお手伝いに、
知り合いの高校生のお兄さんが助っ人したところが、
よほどのイケメンだったのか
噂というか前評判が物凄く、
女子高生を中心に初日から長蛇の列になったほど…と。
詳細を付け足したひなげしさんだったのへ、

 「…ふ〜ん。」

何だ、そんな条件も付いてたのと、
ややあって、驚きの感慨の毛色が微妙に変わった白百合さん。
そんな色物な理由でお客を集めたんだというのが、
彼女としてはちょいと引っ掛かったのかも知れぬ。
だがまあ、売り子の女の子に可愛ゆい子を揃えるというのは、
古来から変わらない 客商売での鉄板な戦略じゃああるのだし。
タコ焼き自体も二日続けて売れたのは、
少なからず美味しかったからでもあろう。

 「そういう話を聞いては、こちらも燃えない訳には行きませんね。」

ロンドン五輪でも女子チームの奮戦が目立ってる今年です。
その人の立てた記録、是非とも破ってやろうじゃありませんか、と。
闘志満々、愛らしいこぶしをぎゅうと握りしめた白百合さん。

  ……ちょっと待て、
  あくまでも、愛しの勘兵衛様に
  浴衣で調理という姿をご披露したかったなんていう、
  可愛らしい動機から始まったお話じゃあなかったですか?と。

そうと突っ込める冷静なお人は、どうやらいなかったようであり。(おいおい)
えいえいおーとの勝鬨をあげるお嬢さんたちの無邪気さへ、

 《 どうやら さほどにおっかない脅威でもなかったらしいな。》

この暑さにも一向にめげないでの、
明るくお元気なこんな調子だということは。
日頃からやっかいな陰につきまとわれての、
びくびくと怯えている彼女らではないらしいと。
それを感じ取ってのこと、
良かった良かったと目許を細めたクロちゃんだったのは、
妖かしにしか通じぬ念波で交わされた、仔猫さんたちの側の事情のお話。
実は陰体、大妖狩りの身でもある真の姿を変化(へんげ)で隠し、
何かしら良からぬ呪いの標的となってた少女らの元を訪ねた二人。
だがだが、ここに満ちているのは、
ただただ朗らかで陽的な生気ばかりであり。
陰気な何かなぞ軽々弾き飛ばしてしまいそうな、
お若いお嬢さんたちの瑞々しい活力が、むしろ物凄いばかり。
そんな様子へほっとしたクロ殿が、
標的だったらしいシチロージそっくりの美少女の、
お膝に抱えられていた相棒へお声を掛けたところが、

 「みいにゃ?」

クロ殿にも今は小さい幼子に見えるということは、

 《 …完全に封印されておるな、お主。》

安全無事だという状況が判れば、
もう自分の能力も用はなかろとはやばや見切ったか。
すっかりと意識を沈めてしまっている大妖狩りだと嗅ぎとれて。
小さなお手々についてしまった甘口ソースを、
右から左からお顔の方を回り込ませるようにしてという拙い所作にて、
何とか舐めとろうと躍起になっておいでであり。
あらあら可愛いvvと、
小さな前足を舐めているように見えているのだろ、
彼女らのお声を聞きながら

 《 そんなにも…人違いをしたことが歯痒かったのかの?》

ありゃりゃあと、小首を傾げたクロ殿だったものの、

 「…っ。」

さすがにそんな呟きが届いたものか、
キャラメル色の仔猫様がふとお顔を持ち上げた。
おやおや言葉が過ぎたかのと、
悪気はなかったこちら様、あややと身をすくめかかったが、
そんな彼らから離れたところから、

 「……おい君、どうしたんだ?」

広々としていて木立もあり、眼福なこと際まれりという緑の庭の縁の方から、
枝を揃えておいでだったか庭師の男性のお声がし。
あれれ?と見やったお嬢様がたのうち、
鉄板の上に居残った焼きカスをコテで浚っておいでだったひなげしさんが、
立っていたこともあって、
不審に思ったそのままそちらへ足を運んでいたのは、
好奇心が旺盛でもあったから。
案じるようなお声だったし、
誰かこの陽気のせいで倒れたというのなら、救急車を呼ばないとと。
淡色チュニックに合わせた白いチノパンのポッケから、
スマホを取り出しつつという歩みよう。
そんな彼女だといち早く気がついて、残りの二人も何だ何だと後へ続いたが、

 「…誰でしょうかね、あれ。」

いわゆる山の手とあって、坂道の多い町だということと、
庭は少しほど盛り土をして構えられているお屋敷なものだから。
地図の上ではお庭へ接する通りも、
だがだが、実際にはやや高低差がある眼下になる格好。
そんな膝下の路上にて、
一応は木陰になってるとはいえ、
むせるような温気が垂れ込めるアスファルトの上、
地へ手をつくほどになってしゃがみ込んでる人があり。
こちらから目撃した庭師のおじさんが、目眩でも起こしたのかと声を掛けつつ、
傍に脚立あっての妙技、
高い鉄柵を乗り越えての直線コースで、
相手のいるところまでを素早く駆けつけておいで。
熱中症だったら迅速に手当しないといけないからで、
ひなげしさんもそこへと気づくと、

 「そこの桶を持って来れませんか?」

氷と水を満たして、ラムネやスカッシュのペットボトルを浸していた、
それ自体も露をまとってる金属製のバケット。
テーブルの脇においてあったのを的確に指示した平八へ、
ぴたりと足を止め、頷き合って、
呼吸を合わせて“せーの”と、二人で持ち上げた白百合さんと紅ばらさんであり。
当然のこと、仔猫さんたちは
木陰へ“お留守番だよ”と置かれて行ったのだけれども。

 《 この気配。》

クロ殿の呟きへ、幼子に戻っているキュウゾウちゃんからも、

 「……。」

お声はなかったけれど、視線は同じほうを向いていたし、
その態度が止まっての少しばかり落ち着きが見られたような。
そして、

 《 用は済んだ。帰ろうか。》

そんなお声がかすかにながらも届いたものだから。
おやまあと鼻白んでのこと、
ややその身を引くよな格好でたじろがせたクロ殿だったが、

 《 ああ。あとはあの娘らが何とかしよう。》

くすすと笑い、ぽんとテーブルから飛び降りると あら不思議。
キャラメル色の仔猫と黒猫さん、
唐突に乱入なさった小さなお客様二人がその姿をすうと消した。



  それからそれから、


 「あ、ちょっと待ってくださいよ。
  その男には覚えがあります、わたし。」

具合が悪くなったらしいという身への介抱は要るとして。
さすがに…家人の前でこの柵を乗り越えるまでのやんちゃはやめときなさいと、
手を掛け、登りかかった久蔵お嬢様を、七郎次と平八で押しとどめていたのだが。
そんなごちゃごちゃに気がついたか、別の庭師の方がバケツを受け取りの、
キンキンに冷たいタオルで顔を拭いてやったところ、
意識が戻ったらしき遭難者の男性だったが。
体を延ばしの、仰向けに寝かされたことで、お顔が見えたその途端、
そこまでは心配してやっていた口調が、ガラリと変わったひなげしさん。

 「??」
 「どしましたか?」

何だどうした、落ちつけヘイさんと、
今度は久蔵殿も押し止める側に回って、鉄柵を登りかかった平八を押さえれば、

 「あいつ、
  女学園の回りでしょっちゅう見とがめられてた不審者です。」

通学路にそんな不貞な奴が出るのは、
八百萬屋の営業成績にもかかわるんで、
学園には内緒で外苑監視の防犯カメラを設置してたんですが。

 「クラブハウスとか道場とかのある側から、
  何とか覗こうとしていてる仕草も押さえてありましたし、
  夏休み明けても来るようだったら、
  首根っこ引っ捕まえてやろうと思ってたんですよ。」

 「おおう。」

これが普通一般の女子高生の言うことだったなら、
そんな気がするだけなんじゃあと、証拠もなしに決めつけるのは危険とか、
周囲の大人も窘めたかもしれないが。

 「林田様のお嬢様の仰せなら。」
 「…だな。」

何しろ、実は当家の防犯システムの中にも、
彼女のオリジナルのあれこれがこそりと設置されている。
選りすぐりの美人揃いという住み込みのメイドさんたちの、
お部屋を覗くだの下着を持ってくだのという不埒な奴らが、
あっと言う間に気配さえ寄れなくなったのも、
それの御利益のせいだと言われており。

 「何と不埒な輩か。」
 「救急車は呼んでやるが、同時に警察も呼ぶからな。」

何の疑いもないまま、そんな方向へ話が進んで、

 「あ、いやあの……、はううっ!」

言い訳しかかった男も、
どこがどう痛いのか、時折胸元を痛いたいと押さえての
満足に話も出来ない様子では、
巧妙不敵な釈明も無理な様子であり。
とっとと身柄拘束されてっての

 『結果として、有罪だったらしいですわよ。』
 『自供したんですってね。』
 『〜〜〜〜 (怒)』

紅ばらさんがお怒りなのは、島田警部補経由のその情報により、
そやつが特に、七郎次お嬢様を狙ってたらしいと判ったから。
なんなら改めての何発か、殴ってやりたいらしかったお嬢様だが、
そんな彼女らの代理、正体を暴露させる切っ掛けも兼ねて、
危ない呪いを弾き飛ばしてくださった仔猫さんたちだったとは、
さすがに届かぬ真実であり。

  ……といいますか、
  そんな珍客があったことも、
  記憶のどこにも残ってはなかったそうですが。



盛夏の中、いよいよのお祭りを前にして。
頑張るお嬢さんたちだというお話だけは、
某警部補にも事件ごと近況として伝わったワケで。

 『これは、その界隈にパトロールへ向かわにゃあですね。』
 『おいおい、そういうのは公私混同と言わないか。』

年の差のみならず、お立場にも相当に距離のある恋仲のお二人へ、
事情は勿論のこと、双方の気性のようなものまでも、
重々知った上で、だが。
精悍で男臭いお顔を、わざとらしくの老け込ませ、
収まり返った発言をなさる、
おひげの壮年警部補殿だったのへは、

 『おや、真面目ぶっててどうしますか。』

殊更意外そうに言い返している佐伯さんで。
上司や政界財界の大物、いわゆる大タヌキを相手にしても、
部下もろとも喰うよな圧力へ、
しょうことなしとのあっさりと、手出しをすんなり止めたものの。
だからこそ我らが隠す手立ても無うなりました、困ったなぁと持ってゆき、
それでのこと、真実が大きに暴露されちゃった…という風に、
胸のすくタイプの謀略を構築するのなんてお手の物。
巧みな詭弁なんて、なんぼでも繰り出せるお人なくせして、
こんなささやかなことへ それはなかろうよと、
征樹殿が軽やかに笑い。
当日の警邏の当番表は既に他の係の者が調整中だと、
ひなげしさんへの内緒メールが飛んだのが、
お盆を前にした週末のお話。
皆様も、体調には注意して、
楽しい夏の夜をお過ごしくださいませね?





    〜Fine〜 12.08.07.〜08.14.


  *川向こうの伝説のタコ焼き売りお兄さんってのは、
   あのお家の、無口な金髪の次男坊かと思われます。
   そっちまで書くには日がかかりすぎたので、
   また今度ね〜。(軽いぞ)

  *途中で寝不足から筆が遅れまくり、
   土曜に書き上がるつもりだったのに、週明けになってしまいました。
   ちちちちぃ。(こらこら)
   だって五輪が楽しかったんですもの。
   柔道の苦戦続きという波乱の始まりではらはらさせといて、
   気がつきゃ眸が離せない様相へ持ってくなんて、
   一体どんな辣腕プロデューサーがいたの?
   本当にこわい子…という感じで、
   結果、ほとんどの注目競技は観てたような気がします。
   まだちょっと残暑が続くそうで、うんざりではありますが。
   皆様どうか、ご自愛くださいますように。

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